#デザイナーズノート

2020/12/21 (月)

対戦カードゲームから考えるコンテンツの拡張性と寿命について

対戦カードゲームから考えるコンテンツの拡張性と寿命について

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この記事は

Board Game Design Advent Calendar 2020

において21日目の記事として執筆しました。
今回の企画に初めて参加させて頂きます、挑戦したいという気持ちで参加させて頂きました。今回は、作品を作る経緯と今後の展望をカードゲームのカテゴリー紹介と共にお話したいと思います、稚文となりますがお役に立てれば幸いです。

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自己紹介
はじめまして、幻想遊戯団のオオタユウです。
幻想遊戯団は大学の元学生寮メンバーを中心にアナログゲームを制作するサークルです。
2020秋のゲームマーケットでは当サークル二作目となるカードゲーム『ペンデュラム・ドールズ』を頒布し、二日間で300個を完売することができました。
本作はカードゲームが好きな仲間たちと共に作った作品ですので、『カードゲーム』をテーマに論じていこうと思います。

ゲームにおける『拡張性』と『寿命』

 カードゲームを制作するにあたって意識するべき点は、面白さは勿論の事として、次に大切なのは『作品のコンテンツとしての寿命』ではないかと著者は考えます。
 できるだけ長く多くの人に遊んでほしい、これはゲーム制作者の誰もが考えることだと思います。そのような中でカードゲームは拡張セットとして新しいカードを追加することでコンテンツとしての寿命を延ばしやすいという特徴があります。
 このカードゲームの持つ『拡張性』を研究することは、今ある多くのアナログゲームのコンテンツ寿命を延ばすことにも繋がるのではないかと思い以下に纏めてみました。

カードゲームにおける三つの拡張方法

対戦カードゲームは
・【TCG(トレーディングカードゲーム)】
・【LCG(リビングカードゲーム)】
・【BCG(ボックスカードゲーム)】

以上の三つの方法のいずれかで販売と拡張を行っていると考えております。
この三つの拡張方法の詳細を見てどのようにコンテンツにメリットがあるかを確認してみましょう。

【TCG(トレーディングカードゲーム)】 (例/MTG、遊戯王など)

 もっとも普遍的で商業的な販売仕様がTCGです。
 TCG型のカードゲームではランダムなカードが入ったカードパックを販売しコンテンツの拡張を行います。

 ユーザーはランダムにカードが封入されたパックから目当てのカードが出る事を期待して購入し、同じゲームのプレイヤーとカードの交換などを行いながら理想のデッキを構築するという流れが一般的です。


 この販売仕様はユーザーが商品を大量買いしてくれるというコスト回収面でのメリットがある一方、ユーザーにとってパックを開けた際に欲しいカードが出ないなどのハズレが存在するという欠点があります。また大会などを開くことで拡張の魅力を届けるためのプロモーション活動に大きな力をいれるなど、コンテンツの継続が難しい一面があると考えられます。

  また、企業の販売するTCGは近年、新パックの販売ペースが早くなっておりそのペースについていくためにコアなユーザーは高い金銭的コストをかけなければならならずコンテンツ離れが発生しやすい傾向があります。

【LCG(リビングカードゲーム)】  (例/ガンナガン、桜振る代に決闘を など)

 LCGとはLiving Card Gameの略称です。

 LCG型のカードゲームはどんなカードが封入されているか表記されている状態の商品を購入し手に入れたカードで理想のデッキを構築していくという流れが一般的です。(参加するプレイヤーの人数分購入する必要がある作品もあります。)

 

 ゲームを拡張する際も同じようにランダム性のない内容物の表記された商品(パック)が発売されユーザーはそれを買うことで従来のゲーム性をさらに深めることが出来ます。ランダム性の無いカードパックを購入することでユーザーはローコストでゲームの拡張についていけるため(『大体廃人プレイヤーがTCGを1弾買うだけのお金があればLCGを1年間遊ぶことが出来ます。』Nデッドカシオペア 引用文)、ユーザーにとって継続性の高いカードゲームになりやすい傾向があります。

 

 同人制作の対戦カードゲームでは最も多くみられる販売形式ではないかと筆者は考えます。
(TCGとLCGの違いについてはこちらの記事にNデッドカシオペア様が分かりやすくまとめてあります。《Nデッドカシオペア LCGというゲームフォーマット*1》)

【BCG(ボックスカードゲーム)】(例/ブレイドロンド ドミニオンなど)

 BCGとはBox Card Gameの略称です。

 BCG型のカードゲームは商品(ボックス)の中身に全てのカードが封入されおり、その商品を購入するだけでプレイヤー同士がデッキを構築し対戦できる完結したゲーム環境が整います。

 LCG型カードゲームとBCG型カードゲームは全てのカードを揃え完結したゲーム環境を作りやすいという近い性質を持ちますが、筆者がBCG型のカードゲームに大きな注目をおく点はBCG型カードゲームの持つ拡張の多様性です。

  BCG型のカードゲームの拡張を行う際はLCG型のカードゲームと同じように、ランダム性のない内容物の表記された商品(ボックス)が発売されユーザーはそれを買うことで従来のゲーム性をさらに深めることが出来ます。

 

  一方でBCG型カードゲーム拡張の最大の特徴と考える点は『拡張単体でもその商品を購入するだけでプレイヤー同士がデッキを構築し対戦できる完結したゲーム環境が即座に整う事』ではないかと考えます。

 

  つまりBCG型カードゲームを新規プレイヤー参入しようと考えた場合、どの拡張を購入しても即座に完成されたゲーム環境が手に入り対戦プレイヤー用のデッキも用意出来るという最もプレイヤーにとって参入障壁が低い拡張方式であると著者は考えます。

総評

 旧来のTCG型カードゲームによる拡張は、ランダマイズされたカードパックを大量に販売することでコスト回収力は高いものの、コンテンツとしての継続性に大きな問題を抱え、コンテンツを維持するためにプロモーションなど商業的な行動をとり続ける必要がありました。

 一方でLCG型カードゲームによる拡張はコンテンツとしての継続力に優れており、販売戦略から考えても長く販売計画を考えるロングテール戦略を取ることで長期的なコスト回収が可能です。

 実際に多くの同人サークルがLCG型のカードゲーム(アナログゲーム)を制作し販売を行っているという一面から同人制作という文化では継続性と環境構築が容易なLCG型のカードゲームが流行にあると著者は感じます。

 BCG型カードゲームは一つのボックス(商品)を買うことでゲームデザイナーが想定する全ての体験が遊べる完結型の販売仕様です。

 一番の注目点は拡張の方向性が多彩であるという点であると筆者は考えます。
BCG型のカードゲームを開発し、次拡張でもBCG型の拡張方式をとりどの拡張から作品に参加してもゲームについてくることが出来る純正型(例、ブレイドロンド、ドミニオン)やBCG型のカードゲームを開発し、販売に成功した後にLCG型の拡張を行うという複合型も見受けられます。(例、ガンナガンなど)

 これらの拡張方式からアナログゲームを見直してみるとアナログゲームはBCG型のカードゲームと同じような販売構造をとっている(作品単体で1~4人まで遊べる)と筆者は感じました。

 アナログゲームもまたコンテンツとして寿命を延ばすために拡張を行うことがあると考えます、その場合、同人カードゲームが行っているLCG型の拡張を行うかBCG型の拡張を行うかをよく吟味し作品の拡張に方向性を持たせることでより作品のコンテンツ性が高まり多くのユーザーに遊ばれるのではないかと考えました。

当サークルの今後の方針

 筆者はこの寄稿を書くまで、BCG型のカードゲームとして制作した『ペンデュラム・ドールズ』をLCG型の拡張を行うことでコンテンツの継続性を上げユーザーに楽しんで貰おうと考えていました。しかしこの寄稿を書くうちに、

  1. LCG型の拡張は小型の拡張であるがコンテンツの魅力を上げるには回数を重ねる必要がある
  2. 最新の拡張の面白さによって作品全体の面白さが決まる傾向にある。

 という二つの特徴があると感じLCG型の拡張はサークル『幻想遊戯団』の制作工程にマッチしないと感じました。

 (LCG型の拡張はデジタルゲームでのダウンロードコンテンツに近い立ち位置に位置すると思います。前作を持っている事を前提に拡張が行われるため前作に即座に組み込まれ、同一のゲームとなってしまいます。そうなると面白さの評価が前作と拡張を合わせた画一的な評価に陥りやすいと感じます、ユーザーからの評価がコンテンツの評価と新拡張の評価という二つに分かれた評価になりずらい、新拡張の評価=コンテンツの評価という結果になりやすいと感じ、そうなると制作者として拡張の完成度をギリギリまで上げる必要性を感じております。)

一方でBCG型の拡張は

・LCG型の拡張に比べて作品一本を作るほどの大型の拡張を行う必要があるが拡張の頻度は少なくて良い

・よくも悪くも前作と拡張の評価が別に行われやすい。(BCG型の拡張ではユーザーは前作を持っておらずとも拡張を購入し評価することができます。このことによって前作と拡張で評価が画一化することを防げると考えます。)

・入り口の広いBCG型の拡張は知名度の低い新規コンテンツと相性が良い

 これらの点でBCG型の拡張とサークルの制作体制のマッチを感じBCG型の拡張を行うことを決定しました。

 またいつの日かBCG型の拡張を行ったことによるメリットやデメリットを纏めて寄稿したいと思います。

参考文献(クリックすれば参考文献にアクセスできます。)

・Nデッド・カシオペア 『LCGというゲームフォーマット』

・み語り 『LはLOVEのL』